大きな声が響いた。
人通りは多くもないけれど決して少なくもないので、行き交う人たちは 何事かと言わんばかりに私たちを見ている。
「吉野先輩はずるいんですよ……」
けれど、それが気にならないくらい、私は今にも泣きだしそうな震える声でそう言った蛍原さんから目が離せなかった。
「かいちょーは本当に吉野先輩しか見えてないです。…あたしが頑張っても意味ないの。今までだってずっと頑張ってきたのに、かいちょーはあたしのこと好きになってくれなかった…っ!」
「、」
「あんなに想われてるのが羨ましくてしょうがないです。…でも、わかってるんです。吉野先輩が かいちょーからの好意に応えなくたってあたしに責める権利はないですから」
「蛍原さん、」
「でも辛いです。先輩の気持ちがそこにはないって分かってるのに必死で先輩のことつなぎとめようとしてるかいちょーを見るのが、…あたしはつらい」