けれどひとつ、私は、蛍原さんの言葉に違和感を抱いた。
――かいちょーのこと、もう解放してあげてくださいよ
私は、成川くんの彼女として過ごしてきた1年半で、彼を縛り付けた覚えは一つもなかった。
吉乃くんとの関係が彼にバレてしまった時、罪悪感よりも安堵が強かった。
最低なことをしている自覚もあったけれど、そのうえで、私はようやく成川くんから解放される、と思ったのだ。
――俺は二千花のこと本気で好きだから
彼の“本気”は、私を自由にしてはくれない。
蛍原さんがもっと本気で奪に来てくれればいいのにと、何度そう思ったことだろう。
成川くんが、私ではない誰かと付き合ってくれたら。誰かに恋をしてくれたら。
「蛍原さんは…成川くんのことが好きなんだよね」
「…は」
「じゃあ、本気で奪いにくればいいじゃない。私を排除しようとするんじゃなくて、蛍原さんが成川くんを───」
「っ奪えないから言ってんでしょ!?」