――1回も2回も変わんないですよ、キスなんて
その言葉が脳裏をよぎる。
吉乃くんにとって私とのキスはその程度のものだった。
好きでもないし付き合ってもいないんだから、そう思われていても何も言えないのに、どうして少しだけ胸が痛むのだろう。
「二千花先輩はこうなることを望んでた。それの何がダメなんですか?」
「…、それは」
「俺からしても願ったりかなったりですよ」
吉乃くんがわからない。
だけど同じくらい、私もよくわからないのだ。
吉乃くんがどんな気持ちで私を見ていたのか、どんな気持ちで成川くんと話していたのか、私は知る由もなかった。