「…おまえ、だれなんだよ」

「山木です」



吉乃くんは堂々としている。
成川くんは怪訝そうに眉を顰めた。



「二千花の、なに?」

「ただの後輩です。あー…まあ、キスはしましたけど」

「…、二千花のこと好きなの?」

「好きか嫌いかでいったら好きですかね」




なんでそんなに淡々としているの。

私は未だにまともに声を発せずにいるのに、吉乃くんはどうしてそんなに普通でいられるの?


くしゃくしゃと髪を掻き、「いみわかんねーよ…」と呟いた成川くん。

傷ついた瞳と目が合った。



「…、ごめん、なんか、二千花とちゃんと話したいけど、このままだと酷いこと言う気がするから、今日は帰るわ、…冷静になりたい」

「…っ、」

「ごめん、…けど、俺は二千花のこと本気で好きだから、」




ぎゅうっと胸を締め付けられた。

成川くんが、ちゃんと私を好きで私と向き合おうとしてくれているからこそ、まっすぐな愛がすごく苦しい。



何も言えず、私は成川くんの言葉に頷いた。

ごめんね、と心のなかで謝って、踵を返す彼の背中を見つめた。