よくわからない男。
本当、その通りだ。
完璧人間で、絵に描いたような王子様が私のどこを好きになってくれたのか、到底理解できそうになかった。
数日考えて、やっぱりお断りしようと決めた。
けれど、私の返事を成川くんは受け入れてはくれなかった。
『絶対好きにさせるから、もう少しだけ俺に頑張らせてよ』
あの時のまっすぐで真剣な瞳が忘れられない。
好きな人もいなかった私は、彼のその言葉を拒否することができなかった。
曖昧な始まりから恋人同士になって1年。
成川くんから届けられるまっすぐすぎる愛に、私は何も返せないままでいる。
蛍原さんと付き合った方が、成川くんは絶対幸せになれるのに。
成川くんがこの1年間私のために頑張ってくれたのに、私は変わらない。
成川くんに触れられるたびに胸が痛むのは、どんなに優しくされても対等な“好き”を返せないからだ。
別れられずにいるのは、ここまで引き延ばしておいて、「好きになれませんでした」って振る勇気がないから。