『山木、今日は駅前の本屋によって帰るって教室で話してたの聞きましたよ』
蛍原さんからの情報をもとに、私は急いで学校を出た。
学校を出る前に吉乃くんには《今、どこにいますか?》と連絡をしたものの、まだ返事は来ていない。
吉乃くんはいつも気づいたらすぐ返信してくれるタイプなので、まだ気づいていないのだと思う。
駅前の本屋と言えばひとつしかない。
図書室で蒼志くんと話したのは、帰りのホームルームが終わってすぐのことだった。
そのあとあやかちゃんのところに行って話をしたので、吉乃くんはもしかしたらもう本屋さんで用事を終えているかもしれない。
もう家に着いていたとしたら仕方ないから、そのときは明日にしよう。
秋の涼しい風に味方されている。
これが真夏だったら汗だくで吉乃くんに会うことになっていたなぁと、そんなことを思いながら、私は駅までの道を急いだ。