「…こわいに決まってますよ」



ぽつり、小さく呟かれたそれ。

静寂がただよう教室に落とされたそれは、彼女の声はしっかり拾うことができた。




「でも、あたしをそんな気持ちにしてくれるのは会長しかいないって思ったから。全然振り向いてくれなくても、あたしじゃない女の子が隣に居ても、会長のこと嫌いになることって、きっとこの先もないんです」


「、うん」


「伝えるしか、あたしには手段がなかった。怖いとか逃げたいとか、そんなこと言ってられなかったんです。先輩が羨ましかったのは、もちろん“彼女”っていう立場が羨ましかったのもあるけど、…たくさん選択肢があるのが、あたしは…すごく、ずるいと思ってました」





蛍原さんは、つよくてかっこいい。

だけど本当はすごく繊細で、きっと、強い女でいなくちゃ保てない気持ちがあった。



そうさせていたのは私の存在と、曖昧だった気持ちだ。