「な、な、……吉乃くん、」
「人多いから。先輩、ほっといたら迷子になるかと思ったので」
「ならないよ…、」
「そうですか?でも俺がこうしてたいので、すいません」
「……、」
そんな言い方されたら拒否することなんかできないじゃないか。そこで謝るのも吉乃くんらしくてずるい。
「てか先輩、こんなこと聞くのもあれなんですけど…、仮にも会長と付き合ってましたよね。これ以上のこともしてきたんじゃないんですか」
ふと、思いだしたように吉乃くんがそう聞いてきた。事情を知っているからこそできる話でもあると思う。
これ以上――それはつまり、手をつなぐよりも深いことを指している。
ハグに、キスに、それ以上だって含まれているだろう。
「…キスまでは、したことある」
「…、ふうん」
「けどそれも頻繁にじゃないの。多分、数えるくらいかも」