「じゃ、じゃあ行こっか」
「二千花先輩」
スマホをカバンにしまい、髪の毛で顔を隠しながら歩き始めようとすると、そんな私を呼び止め、同時に手首は吉乃くんに捕まれてしまった。
自分の顔が赤いのがわかるから目を合わせたくない。
捕まれた手首からこの熱が伝わってたらどうしよう。
「なんか、照れてます?」
「…、ぜんぜん?」
「ふうん」
吉乃くんは紡ぐ言葉に遠慮をしない。
直球で、まっすぐで───…
「かわいいですね」
だから、逃げられない。
「うぁ、」
「どういう反応ですかそれ」
「かっ、…う、」
「かわいいです。嘘でもないです」
「…、うっ、」
「先輩って照れると日本語話せなくなりますよね」
うん、それは主に吉乃くんのせいなんだよ。
ただただ言葉をつまらせ顔を赤らめる私に、吉乃くんは柔らかく笑いかける。
そして、手首をつかんでいた手を流れるように移動させ、ぎゅっと、手を握った。