「吉乃くん」
「なんか気になるとこありました?」
同じようにスマホでお店を検索していた吉乃くんが私の呼びかけに反応してこちらを見た。
「うん」と小さく返事をし、画面を見せようとすると。
「たしかにおいしそう」
「っ、」
私のスマホ画面をのぞき込んだ吉乃くん。
突然ぐっと近くなった距離に、心臓が大きく高鳴った。吉乃くんの柔軟剤の香りが強くなる。
「そこにしますか。近いし」
「う、うん、」
「え。どうしたんですか」
「顔赤くないですか」とご丁寧にそんな言葉までも付け加えた吉乃くん。なるべく目を合わせないように俯い、ブンブンと首を横に振る。
どうしたもこうしたも吉乃くんのせいだ。
そんな急に至近距離になったらドキドキしないわけがないじゃないか。何考えてるんだ本当に。