お互いに恋人が居れば、この下心を隠したまま 仲の良い後輩になれるかもしれない。
友達になれるかもしれない。
けれどそんな甘い考えは、一瞬で崩れることになる。
「あの2人をイイ感じにさせてからの方が別れやすくないですか?」
「、…そう、かもね」
「それとも、先輩、俺のこと好きになりますか」
ここで距離を詰めたら好きになってくれますか。
「先輩。俺と悪いことしますか?」
キスをしたら、俺のこと意識してくれますか。
一年以上 何もせずに見つめるだけの恋をしてきたくせに、距離を詰めた途端、贅沢な嘘をついた途端───張り詰めた糸がプツリと途切れたみたいに、俺は欲張りになった。
こんな嘘にしか頼れない。
こんな嘘をつかないと、俺は先輩を振り向かせられない。
彼女はいない。
ずっと先輩のことが好きだった。
俺の事を見てほしい。
成川先輩のことが好きじゃないなら、俺のこと好きになってよ。
けれど、先輩が成川先輩とちゃんと向き合って行くのを見て、俺もこのままじゃダメだと思ったのだ。
もう何も嘘をついていたくなかった。
この気持ちをつたえて、正々堂々先輩の隣を歩きたい。
先輩が成川先輩と決着を付けた。
俺も、逃げてばっかりじゃいられない。
もう、ずるくて弱い自分でいるのはやめたい。