「…消える…、って」
「え?」
「……あなたが読みたがってるのってこれじゃないですか?」
読んでいた本が同じシリーズ物だったなんて、あまりにも奇跡すぎる。
そのまま成り行きで一緒に帰ることになった時は、いよいよ死ぬと本気で思った。
人生における全ての運を使い果たしたかもしれない。
一年以上 片想いして、だけど行動を起こす勇気がないせいで眺めているだけだった二千花先輩が隣にいる。
「そういえば吉乃くん、あの本何で知ったの?」
「え?」
「有名じゃないでしょ、あんまり。私は元々違う作品読んでて、その繋がりで見つけたんだけど」
『消える、』を読み始めたのは、本当になんとなくだ。図書室をふらっと眺めていた時に たまたま手に取った。それ以外の理由はなかった。
けれどなんとなく、それをそのまま言ったら'つまらない男'になってしまうと思った。
二千花先輩との関わりをこれで最後にしたくなかった。
ただでさえ年下なのに 子供だって思われたくなくて、少しでも彼女の気を引きたくて───
「…オススメされました。……、彼女に」
そして俺は、贅沢な嘘を付いた。