先輩の名前は、そのあと 風の噂で聞いた。


吉野 二千花と言うらしい。



彼女の苗字と俺の下の名前が同じって、いつか話す機会があったら話題として盛り上がるかも。

俺も本が好きだから、いつかおすすめの本を教えて貰おう。


図書室で彼女を見かけても 声を掛ける勇気のない俺は、いつもそんな想像をするだけだった。



一目惚れしたとはいえ、彼女が成川先輩と付き合っていることを理由に、俺は何も行動せずに1年という月日を過ごした。



彼女が成川先輩といる時にはあまり楽しくなさそうなのは何となく気づいていたので、いつか2人が別れた時にアタックすればいいと そんな呑気なことばかり考えていた。



偶然に助けられたのは、そのさらに半年後のことだった。