珍しく偶然じゃない。


吉乃くんと2人でちゃんと待ち合わせをするのは、知り合ってから初めてに近かった。

吉乃くんは私の方に向かってくると、近くにあった椅子に座り、「ちょっと休憩」と言って小さく息をついた。




「片付け、長引いちゃって。ワッフルの機械洗うの大変で」

「わ、そっか。お疲れさま」



グラウンドからギターやドラムの音、それから盛り上がる生徒たちの声、と相変わらず賑やかなお祭りムードが漂っている。


その声を傍らに、この静かな教室で吉乃くんと2人きり。話をするなら、後夜祭に行くよりもここで話した方が良いかもしれない。



「吉乃くん」
「二千花先輩」

「……」
「……」

「先どうぞ」
「先どうぞ」




……どうやら、考えることは同じみたいだ。

間も発言するタイミングも綺麗に一致した。
偶然の産物。



ホント、吉乃くんとは最初から偶然ばかりだ。