わが校の後夜祭にまつわるジンクスは、興味がなくとも自然と耳に入ってくることがあった。
後夜祭で一緒に花火を見た者同士は付き合えるとか、ミスコン・ミスタコンの優勝者同士は恋に落ちるとか、軽音楽部のパフォーマンスのトリを飾るバンドのリーダーは好きな人への愛を詩にしなくちゃいけないとか。
最後のものに至ってはわが校の、というよりは軽音部の決まり事のような気もするけれど、とにかく恋愛系のジンクスはたくさんあるみたいなのだ。
今になって考えれば、成川くんと私が一緒に後夜祭に参加していたら、だいぶ縁起が悪いことになっていたかもしれない。
――ガラ、
そんなことを考えていると、ようやく教室の扉が開いた。
ぱっと顔を上げて視線を移すと、そこには待ちわびていた“彼”のすがたがある。
「───…遅くなってすみません、二千花先輩」