吉乃くんはなんとなく“トクベツ”なのだ。
秘密を共有したから、というのは大前提ではあるけれど、それ以外にも、吉乃くんのもつオーラや雰囲気、彼の放った言葉。
ぜんぶが、私の中で大きな存在になっている。
だから余計、吉乃くんに興味がある。
この“トクベツ”がなんなのか、わからないのなら、本人に確かめたほうがいいのかな。
…そういえば、吉乃くんのついた“嘘”の話もちゃんと聞いていなかった。
どちらにせよ早く吉乃くんと会って話をしなければいけない。
連絡しようにも、そういえば吉乃くんの連絡先を教えてもらっていないなーと、そんなことを思いながらスマホを取り出す。
「…って、時間!」
スマホに表示された時間を見てぎょっとした。
時刻は12時55分。あと5分でメイとレナのパフォーマンスがはじまってしまうではないか。
ダンスを見終わったら私は休憩時間が終わるので、またクラスのカフェに戻らなくてはならない。
吉乃くんとは、運よく遭遇出来たらいいな、と小さく願いながら、私は体育館へと急いだ。