保健室を出た私は、ぼんやりと成川くんとの会話を思い出しながら体育館へと続く廊下を歩いていた。


私、別れたんだ、本当に。


成川くんとこれからクラスで顔を合わせるのはすこし気まずいけれど、ちゃんと話をした上でのさよならだったから、後悔という言葉は当てはまらない。


けれど、今の私はなんとも形容しがたい感情だった。


…なんだろう。

違和感があるのは、成川くんとのことよりも自分の気持ちのような気がするのだ。



――結構深い関係なのかと思ってた



吉乃くんと私の関係をあらわす言葉が見つからない。


関係性の程度でいったら深くはない。吉乃くんのことは全然知らないことが多いし、吉乃くんに自分のことを特別教えたわけでもない。


けれど同様に、浅すぎる関係でもないのが事実なのだ。


付き合ってはいないけど触れ合った過去がある。吉乃くんは、私が成川くんに対して抱いていた感情を知っている。