きっと陽葵はそこにいる。


確か、もう少し行った所にあったはず…!

昔の話で確信なんかないのに、夢中で走った。


頼れるのは……純粋に陽葵を好きだった、子供の頃の俺の記憶。



どうすれば良いとか、どうしたいとか、

そんなの間違ってる。


大事なのは“陽葵をどうさせたいか”だ。

陽葵の為と思って嘘をつき、悲しませた。


泣いてたら意味がない。

笑ってなきゃ…意味がない。


本当は陽葵を笑わせたいんだ。


俺は、陽葵の笑顔が好きなんだ。



「いた!」

雨の中、陽葵はやっぱりお地蔵さんの前で座っていた。


俺に気付いて逃げようとする陽葵の腕を掴み、持っていた傘を投げ捨て、抱き寄せた。


びしょ濡れの陽葵に胸が痛む。

「や、やだ、離して…っ……」

俺の体を押す陽葵を力強く抱きしめた。


「陽葵の為と思って離れたのに…勘弁してよ。これ以上、俺を陽葵でいっぱいにさせないで」

「…え…?」

「今まで自分の気持ちに嘘をついて、本音を隠してきた……。光くんじゃなくてもいいの?彼なら陽葵を幸せにしてくれるよ?」


まだそんな事を言う俺を許してくれ。

不安なんだ。確認しないと。