落ちつけ、俺。落ち着いて考えるんだ。
陽葵の行きそうな場所を。
俺は目を閉じて、雨の音だけを耳に入れた。
小さい頃は好奇心旺盛で落ち着きが無い陽葵は、よく両親に怒られていた。
その度に泣いてどこかに行き、俺も一緒になって探した。
どこにいるかわからなくて、陽葵の名前を何度も呼んだ。
見つからなくて、泣き出しそうになった俺の前に現れたのはお地蔵さんだった。
その隣に、小さくなって座る陽葵がいた。
まだ瞳に大粒の涙が残ってる陽葵は、俺にこう言ったんだ
『ここにいるとね、お地蔵さんが助けてくれそうな気がして…お地蔵さん笑ってるでしょ?』
…そうだ。思い出した!
陽葵、泣いたらいつもそこに行って、元気もらって、謝って、仲直りしてた。
『お母さん達には内緒だよ』
俺だけに教えてくれた、陽葵の秘密。