頼むから今は離れてくれ。

あっちゃんって言う子が陽葵の顔を覗く。


「ひーま、どうしたの?」


俺は助けを求めるように2人を見た。


「こいつ、何があったか知らないけどこっちに来た時から元気無かったっすよ」

「え…そうなのか?陽葵」

「だから俺が元気付けようとからかってたら、そこへ祐介さんが来たんです」

そうだったのか…


他の男が陽葵を慰めるのは良い気分じゃ無いが、俺も大人。ここは我慢だ。


「そうとは知らず、ありがとう光くん」

ニッコリ笑って見せた。


「おい。陽葵、そんな事してても何も変わんないだろ?」


「光くん、ちょっと手離して」

グイッと陽葵の腕を引く光くんに、また嫉妬する自分がいる。


「陽葵、どうした?どっか具合悪いのか?」

なぁ陽葵…ほんと、どうしたんだよ……?

俺は陽葵の頭を優しく撫でた。


「妹じゃ…やだよ……」

っ!

誰にも聞こえないような小さい声で呟いた陽葵。

聞き間違い、じゃ…無いよな?


「陽葵、帰るか」

「えっ…」

勢いよく顔を上げた陽葵はひどく驚いていた。


「ご、ごめんなさ…っ」

陽葵を抱きしめて言葉を遮った。

「良いよ。無理しなくて」


もし、陽葵が俺と同じ気持ちなら、我慢しなくて良いって事か…?