「飲み過ぎだろ、蓮」

手に持っていた缶ビールをテーブルの上に置いた。

「そんな事ねぇよ。祐介は言い過ぎだろ“手なんか出すか”って」

「は…?」

「陽葵ちゃん、祐介に懐いてんのに“なんか”って言葉は傷付いたんじゃねぇの」

「それはねぇだろ」


陽葵は俺を兄のように慕ってる。

所構わず抱きついてきて、無邪気に笑う。


その気が無い事なんかすぐわかる。


「ねぇ祐介、陽葵ちゃんの事妹でしか見てないの?」

「…見て、ない」

「ほんと?」

麗華(れいか)に鋭い視線を向けられ、目を逸らした。


見てないわけが無い。

いつからだろう、陽葵を妹として見れなくなったのは。

どんどん可愛くなっていく陽葵に焦りを感じたのに、あの頃の俺は照れ隠しで陽葵から離れた。

毎日俺の帰りを待つ陽葵の姿が健気で嬉しかったのに、部活だからと言って遊んでやらなかった。

それが原因で陽葵とは年に1回、バーベキューの時しか話さなくなった。

すっげぇ後悔した。

見る度に可愛くなって、変わらない笑顔を向けてくれて…好きなんだって改めて実感した。


忘れようとして彼女も作ったし、陽葵と離れる為に1人暮らしも始めた。