「えー!喋ったの!?あのイケメンと!?」
「いや、まじで感じ悪かったよ?なんも言わないと思ったから自己紹介しようと思ったのにあいつめっちゃ冷たい態度とってきたんだもん。絶対腹黒だよ。イライラするぅ…」
朝から真帆に当たりまくっていた。
なんせあんな初対面で嫌な雰囲気になったのははじめてだからだ。
「「きゃ〜!!!」」
でたでた。また黄色い声。その先に誰がいるかなんてもう分かっていた。
瑠衣、である。
「顔がいいだけで中身意味わかんないのに。騙されてるわ、あの子たち」
「いや、やっぱ世の中顔だよ」
的確である。高校生の恋愛なんて顔である。と誰もがゆうほどだ。
昼休み。真帆と藍は学食を食べに食堂へ向かっていた。
「いやあ、お腹すいたなあー、真帆、何食べる?」
「カツカレー」
「あ、それにする。間違いなく美味い。あれは完璧。」
話に夢中になっていると大きな壁にぶつかった。
「痛っ、ごめんなさ、」
顔を上げたら。瑠衣の姿があった。
前髪を上げて、マスクをつけ。昨日とは全く違う。見た目が、チャラい。
「…ごめん。大丈夫か」
「えっ、うん、別に。そっちこそ」
「俺は、別に。」
気づくと真帆の目が光に満ちている。
固まっている。動かない。と思っていたら
「ままままま、まって!?、前髪上げてる、なな、なんと似合ってます!」
「…は、はぁ」
めっちゃ呆れた顔をしている。真帆、どうか落ち着いてくれ。
イケメンに目がない真帆にはこんな展開はラブシチュエーションな訳である。
「あの!!!、名前!!なんてゆうんですか!?」
声がでかい。周りの女子がその声につられて集まってきた。
あー、面倒。
「……神崎瑠衣。」
なんて漫画チックな名前なんだろうか。
「名前から王子!!!サスガ。100点。合格」
周りの女子はキャッキャとハートが飛びまくっている。
そんな瑠衣はうざったるそうに眉間にシワを寄せている。
「……あの、邪魔です。通れないんですが。」
低く優しい声をきいた女子たち。真帆を含む十数名がその言葉に反応した。
すっと花道が出来た。何だこの団結力は。
そんな行動も読めず、藍と瑠衣だけ真ん中にいた。
すると真帆が目で藍を睨む。
「こらっ、王子を通してあげなきゃ!藍、あんたそこ邪魔!!ポジションそこじゃないわよ!」
「はいはい…」
やれやれ、というように。そこからどいた。
そんな花道を何も無いように、通って行った神崎瑠衣。
食堂の隅に置いていたのであろうギターを片手に廊下を歩いていった。
なにか、バンドでもやっているのだろうか。
「神崎瑠衣って、、聞いたことあるような」
女子の中のひとりが口に出した。周りはその子に色々と問いかけている。
気の所為だろう、とその話は、終わった。
後々になって、神崎瑠衣の存在が大きいものだとなるのは、まだ誰も予想もしていなかった。