私はまだ知らなかった。
君という過去に。
君という音楽の意味を。

だから私は知らないまま、君の過去を漁った。
だから君は知らないまま、あの歌を捨てたんだ。

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「いやいや、、なんの騒ぎ?」

朝から騒ぎになっているという2年3組へ行くと、
言わんばかりの人だかり。

「な、何事??」
「わっかんない、でもなんか朝からこんな感じ」
「いや、まじかよ」

そこから聞こえてくるのは女子の黄色い声。
何かイケメンでもいるのだろうか。
人混みをかき分けたどり着いた先には。

「…」

見たことも無い、君がいた。まだ知らない、君。

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「あの子誰だったんだろうね??」
放課後、真帆が目を輝かせながら聞いてくる。
「なーに?一目惚れ?」
笑いながら返す。確かに美形男子って感じだったけど。
無口でなにも言わない、なんか感じ悪そうな男子だった。

「あー!筆箱忘れた!!ごめ、真帆先帰ってて」
6限の移動教室の時置きっぱなしになっていた。

「あったあった。」
見つけて、裏口から出ようと中庭を通ると、私は足を止めた。
歌っていた。あの、三組の例の男子が。こんなにも綺麗な声で。