「なに・・やっでるんだよ・・。」
捨てたって言ってたじゃないか・・。
書き物は嫌いって言ってたじゃないか・・。
「アアア・・アァアア・・・。」
ノートに敷き詰められた文字がどんどん滲んでいく・・。
好きだったはずの感情が少しずつ黒く染まって、いつの間にかその想いが逆転していった日々。
そんなものは一瞬にして溶けていった。
切迫早産になって入院するまで、
書き綴られていたクミコの言葉。
あの日を境にノートは空白が続・・
・・・・・・!?
《これが最後です。》
・・・・・え・・・・・?
《もしこのノートが見つかったら、きっとコウちゃんは読み進めると思います。
だから、最後にこの文章を残します。》
・・・・・・・・・・・・・・
《今日、興信所から調査報告が届きました。
でも安心してね。
すぐにシュレッダーしました。
コウち
私以外の女性に、
気持ちが移ろいでくれてありがとう。
岸本ナオさんは、
本当にコウちゃんの事を想って、コウちゃんの事が好きな子だと感じました。
…女の勘は当たるからね?
なにより、
あの子の年齢を聞いてすごく嬉しかった。
若いから、
きっと大丈夫だと思います。
コウちゃんを“お父さん”に出来るのは、
コウちゃんの“幸せ”を実現できるのは、
私ではなくてあの子です。
だから私は今、自分の身の振り方についてすごく悩んで、考えています。
どういう手段を取るかまだ分からないけど、
これだけは言わせてください。
私は、コウちゃんとナオちゃんの関係を誰よりも喜び、その先の展開を望んでいます。》