思いっきり被疑者の名前を間違える、
自由奔放な天才鑑識官が、
衣服を検分中の輪へ割り込んでいく。
「・・・・たくさんあるな・・。」
本棚の隅にノートが重なっていて、
表紙には“マンガ帳 vol 1”と、
描いた日付が書かれていた。
中を開くと、鉛筆で描かれたオリジナル漫画・・かな?
vol 1では[お釈迦様!]
とタイトルが書かれている。
「ヨシト君、聞いてきたよ。
高校の時から年1本漫画描いてたらしくて、
今もずっと漫画家目指してたらしいんだけど、落選落選ばっかりで、
ムシャクシャして今回無差別に殺っちゃったんだってさ。」
「確かに・・毎年1本描いてるみたいだね。」
マンガ帳 vol 1・・vol 2・・3,4,5・・
漫画家志望のフリーター・・。
先日、取調室で自供した、
“将来への不安で自暴自棄になった”
というのはこの事だったのか・・。
「うっし!じゃあ皆、速やかに撤収!」
関本主任の号令と共に家宅捜索が終わり、
押収された物的証拠を基に、正式に大河内君への逮捕状発行の手続きへと進んだ。