「だって潤の方が十分派手だから、私が一緒に並んでいても目立たないものね」
あぁ、そういった意味か。紛らわしくて困るよ。あんまり天然な事ばかり言ったら男が勘違いするから程ほどにするべきだと思う。
菫は服の山から1着取り出した。そこにはスミレ色したロングのワンピースがあった。それと青と白のストライプの靴を手に取って、花のアクセサリーを手に取る。
そしてまたこちらへ笑って見せるのだ。
「ねぇ出て行ってよ」
「え?」
「試着したいから出て行けって言うの。
それとも私の裸が見たいって言うの?変態ね、あんた」
「な!誰が菫の裸なんてッ!」
「じゃあさっさと出ていく。用意が出来たら呼ぶから」
可愛くない事ばかり言っていたが、洋服を手に取った菫はとても嬉しそうだった。自分が作った服を手に取り嬉しそうな顔をしてくれるのは、やっぱりデザイナーを志す身としてはこれ程にはない嬉しさがある。
部屋から無理やり追い出されて10分後。
再び扉が開けられた時、思わず唾を呑み込んでしまった。
スミレ色のワンピースを着た彼女の実に美しい事。こんなに綺麗な女だったか…?
小さい時から美しい女だとは思っていた。けれど、ここまでとは――
女性にしては身長はやや高め。顔も小さくて、華奢だけど程よく筋肉のある手足はすらりと長く伸びていた。
大きな瞳と真っ白い肌に艶やかな黒髪は、想像していた以上に洋服を美しく際立たせた。
思わず言葉を失い彼女へとくぎ付けになっていると、菫は申し訳なさそうな顔をした。
「やっぱり私には似合わないわね…。着替えるわ」
再び部屋に戻ろうとした彼女の腕を掴む。