「ん~ッんま~い!」
「お前はいつまで経っても子供が好きなような食いもんが好きだよなぁ!」
「大人になってキャビアやフォアグラを食べても全然味が分かんないんだもん」
「あっはっはっはっ!子供が何を生意気に良いもんばっか食ってんだい!」
いつまで経っても子供扱い。親にとってはいつまでも子供は子供らしい。
けれど本当に旨いんだ。かーちゃんの作るシチューも唐揚げもハンバーグも。どの料理もすごく甘めでさ。
俺好みの料理をパパっと作ってしまうのだから、母は偉大だ。
「今日は菫ちゃんと一緒に演奏していたな、久しぶりに聴いた気がするよ」
黙って食事を口に運ぶ父が、珍しく口を開いた。
「そう?最近帰ってきたらよく弾いてるよ」
まぁ、今日は喧嘩をしてしまったのだが。
「やっぱりフルートとピアノは一緒の方が聴いていて気持ちが良い。
菫ちゃんは休日はよくひとりでフルートを吹いてはいるがな」
「そうなんだ……」
「小さい時は毎日のように一緒に演奏していたな。とーさんはあの曲が好きだぞ?」
「ホールニューワールド?」
父は笑顔で頷いた。
菫はあの曲が好きで、あればかり演奏したがったもんだ。
「菫は元気にしてんのかい?」
「おー…元気?そうではあるけど…。
つーかかーちゃんの方が菫とは会う機会が多いだろう。お隣さんなんだから」
「最近は全然会っちゃいないよ。大地は都内に住んでるつーから何年も会ってねぇような気もするし。
菫も菫で忙しいって鈴ちゃんが言っていたよ!
篠崎リゾートでバリバリ仕事をしとるんだとよッ!あの子は鈴ちゃんには全く似てないね!どう見てもお父さん似だ!」