「は?!誰がよッ!何で潤にそこまで言われなきゃいけないの?!
私は篠崎リゾートの未来の為に自分が最善の道を選べればいいと思ってるの!
あんたになんか言われたくないわ!S.A.Kの未来の事なんか何ひとつ考えずに自分の自由に生きて、そりゃ楽しいでしょうね?!
おじちゃんたちは潤に自由に生きろと言ってくれるかもしれないけど、もう少し大人になんなさいよッ!」
目をつり上げて、顔を真っ赤にさせる。
そうやって俺に言いたい事があればハッキリと口にするじゃないか。それを何故おじちゃんに言わないのだ?
菫の言う事は半分当たっているかもしれない。俺の生き方に両親は口出しした事がない。S.A.Kは本来ならば俺が継ぐべきだ。けれどそうじゃなくて良いと言われた。
俺だってS.A.Kは無くなって欲しくない。これからも大きな企業になって欲しいと願う。けれどその未来において必ずしも自分が社長でなければいけないとは思わない。
「潤に私の気持ちなんか分からないわ!」
「ああ!菫の気持ちなんか分かりたくもないね!」
窓を閉めたのはどちらからだったのか。それは最早同時だったのかもしれない。
冷たく閉ざされた窓の向こう、菫がどんな顔をしているのかなんて知らない。
窓を閉め切り、カーテンを二重に引く。さっきまで演奏していたピアノを乱暴に叩きつけると、様々な音が混じり合って部屋中に不協和音が響いた。