「ねー、潤くん聞いてー。ねーちゃんお見合いするんだって。
オオクラさんっていうイタリアンのレストランを経営しているぶっさいくなデブと」
「ちょ!大地いい加減にしてッ!」
大体何を不細工でデブと決めつけているのだ。
驚く程のイケメンかもしれないだろう。
「えぇ?!マジで?!だってこの間西城さんの事が破談になったばかりだろう?」
「誰誰?サイジョウさんって。さっきもお父さんが言ってたけど」
だから何故潤も余計な事しか言えないのかしら?
怒りは頂点に達していた。
無言のまま乱暴に窓を閉めて、大地の首根っこを掴み無理やり部屋を追い出す。
’暴力女ー!’と大地の悲痛の叫びが扉越しに聴こえたけれど、それも無視して部屋の鍵を閉めた。
シンと静まり返った部屋の窓。再びこつんと小石が投げられる。無視していても何度も何度も投げられた。
幼い頃の習性を今更になって後悔する。私の出窓にも小さな小物入れに入っている小石が何個がある。
昔からこうやって用事がある時は窓に小石をぶつけ合っていた。…そんな物、未だにあるなんて。
私達はもう25歳なのよ。いつまでも子供じゃない。とっくの昔に別々の道を歩いているのに、こんなものにまだ囚われているなんて。