12.潤□約束の有効期限□
結婚式から1か月過ぎた。
新居探す暇もなく結婚式を終えて、ドタバタのまま菫は改めて俺の家へ引っ越してきた。
使い勝手の悪いデザイナーズマンションだったけれど、菫は結構気に入っているらしい。シャワールームが丸見えなのが気に食わないらしいが。
なので暫く引っ越しをする予定は無し。
「菫ー行くよー」
「ちょっと待ってよー。洋服選んでるんだから」
「えーまだ選んでるの?」
衣裳部屋には、結婚式で使われたウェディングドレスが飾られている。
窓から太陽の光が入って、それに照らされてパールやスワロフスキーがキラキラと光る。
菫はクローゼットから何着も洋服を取り出し、両手に抱えている。相変わらず優柔不断で、洋服はいつまで経っても自分で決められない。
けれど俺が作った洋服が溢れる衣装部屋で服を選ぶのが、菫は好きらしい。そうやって作った洋服を大切にしてくれる人がいるから、ここに溢れている洋服たちは幸せ者だろう。
「これは?Dimplesの新作のセーター。可愛いじゃん」
「確かに可愛いけれど、私は潤の作った洋服の方が好きだわ」
全く意識もせずに可愛らしい事を言ってくれるのだから、参るな。
「それにあなたの作る服って奇抜すぎて休日くらいしか着れないんだもの。
Dimplesはそれに比べて機能性も優れているから仕事に着て行けて助かるわ」