「おじちゃん、鼻水出てる」

「君に言われたくない!お母さんティッシュ!」

父は顔を真っ赤にして母の方へ大きな足音を立てて歩いていく。

その姿にはやっぱり大地も呆れ顔。

「あ、そうだ。特別に来て貰ったんだ。なんていったってこのホテルの次期オーナーだからね」

ドアの奥からはスーツを着た大輝さんと…

「美麗さん!」

「そっちかよ、菫はー…」

「あ、大輝さんも…」

スーツを着た大輝さんの横には、彼女らしい可愛らしいピンクのワンピースを身にまとった美麗さんが立っていた。

少しだけ茶色い髪を緩く巻いて、彼女らしい華奢なアクセサリーをつけている。

思わず心で思っていた事が口に出た。

「美麗さん…なんて可愛らしい…」

「いや、主役のお前が言うなよ」

思わず隣にいた潤からツッコミが入る。

だって仕方がないじゃない。こんなに女性らしくて可愛らしい女の子中々いないわ。

まるで道端に咲いているお花のように奥ゆかしくて清らかな…。

「菫さん今日はおめでとうございます。
とてもドレスが似合っていて、綺麗です…」

そう言っている途中に美麗さんの大きな瞳からほろりと涙が流れた。

「なッ!何故あんたが泣いているッ?!
馬鹿じゃないのか?!結婚するのは菫さんであんたではないッ!
その涙もろいところを何とかしろッ!」

「うるさいわね!あんたに言われたくないわよッ。
思わず感動して泣いちゃっただけじゃないのよッ。
それよりティッシュかハンカチは?!」