秋の終わり。大安。

西城グループのホテルのチャペルで私は潤のお嫁さんになる。

とても晴れた土曜日の事だった。



「すーみーれー……」

オルガンの和やかな音楽が聴こえる控室の中で誰よりも号泣していたのは、お父さんだった。

その横で母がにこにこと嬉しそうに笑っている。

まだ式も始まっちゃいないのに私のウエディングドレスを見て号泣する。そんな父を呆れながら見つめているのは大地だ。

母は着物を着ていて、父と大地はスーツで今日と言う日をビシッと決めているけれど、号泣している姿は何とも情けない。

「おいおい、まだ式が始まっちゃいないのに何であんたが泣いてるんだよ…」

「菫…綺麗だ。世界一…いや宇宙一綺麗だ…。
こんな綺麗な娘に育って…ヒック…お父さんは本当にヒック…嬉しいよ…
でも菫が嫁に行くなんて嫌だァァァァ」

「あらあなたがこんなに早く結婚を勧めたんじゃない。
それにしても菫本当に綺麗だわ。潤くんの作ったドレスよく似合っている」

「お母さん、ありがとう…」

このドレス、実はひと悶着があった。

作ってくれたのはいいが、微妙にサイズが合わなかった。

そりゃそうだ。普通の洋服とは違う。いくら私の身体のサイズを知り尽くしている潤であったとしても、ミリ単位の違いで格好悪くなってしまうのがウェディングドレスというものだ。

あのロマンチックなプロポーズの後ドレスを試着して、そして潤の顔が青ざめていくのが分かった。そして大慌てで手直しをしていた。

何はともあれ今日と言う日に間に合って良かったのだけど。