美しいレースの首元が印象的で、シルクの素材にはピーズやパールが埋め込まれている。それはお花の柄になっているように思えた――
店頭や雑誌の中では見た事がある。それにこの間母やおばちゃんと試着しに行ったドレス屋さんにも。
これは恐らく…いや確実に…ウェディングドレスだと思う…。
驚いて後ろを振り返ると、潤は頭を掻いて照れくさそうに笑う。その頬にはふたつくっきりとした笑窪が浮かび上がった。
体中が熱くなっていくのが分かる。目の縁がジンジンと熱くなっていって、指先が微かに震える。
潤はポケットから真っ白のケースを取り出して、それを開いた。
ケースの中に埋め込まれていたのは、キラキラと輝くダイヤモンドの指輪だった。
「何かおじちゃんが1番盛り上がっちゃってて切り出せなかったんだけど…
菫、俺と結婚して下さい」
目の前がぼやけて見えなくなっていく。潤の顔もダイヤモンドの指輪も…。
こんな不意打ちはずるいわ。プロポーズも指輪も嬉しいのに、まさかドレスまで用意してくれてたなんて
「う……うぅ…」
「おいおい、何泣いてんだよ?!
つーか菫が泣くの見るの久しぶりなんだけど」
「何よ人を冷徹人間みたいに…。こんな嬉しい事されたら誰だって泣くわよ…。
このドレスは手造り?潤が作ったの?すごすぎるわ」
「ま、まぁねー。菫が誰と結婚してもウェディングドレスは俺が作ってやろうとは思ってたんだよ。
菫と付き合いだしてから作ってはいたんだけど、おじちゃんがいきなり結婚式を挙げるとか言い出して、間に合うか不安だったんだけど…」