「だって、潤と舞の事でしょう?
Double toothもDimplesも」

「は?」

頬杖をついた潤はえらく間抜けな顔をした。

「S.A.Kのお店の名前はおじちゃんがつけたんでしょ?日本語で八重歯と笑窪よ。
潤と舞の事じゃない」

それを言ったらポカンと口を開けて再びアホ面をする。

「知らなかった……」

「え?本当に?
新しいお店の名前がDimplesって聞いた時点でピンと来てたけど
だって潤は笑窪が特徴的で、舞は昔っから八重歯が可愛かったものね」

「いや、あの何も考えてないとーちゃんが店の名前に由来があるなんて事さえ考えてなかったよ。
わかんねーもんだな……近すぎると余計分かんなくなるもんなのかな?」

「確かにそうかも…」

私もお父さんの事が分からなかった。

自分の事をどれ程大切に想ってくれていたのかも、近すぎると見えなくなる事もある。

それでお互いにすれ違ったりしちゃって…。

潤の言う通りなのかもしれない。



目の前の潤が少しだけ頬を赤くして嬉しそうに笑う姿を見て、こっちまで嬉しくなる。

「あ、そうだッ!」

「何?」

思い出したかのように潤が私の腕を掴み、リビングから隣の部屋へと移動する。

そこは私がここへ家出した当時に寝ていた部屋で、潤の作った洋服が溢れる部屋だった。

ぱちんと明かりを点けると、そこには前までなかったマネキンがあって…そのマネキンが真っ白のドレスを着ている。