「お父さん…」

「潤くん…菫を頼む…。
泣かせたりしたら承知しない…。
苦労をかけたら絶対に許さない。
もしも他の女にうつつを抜かせたら寝首を狙ってやる…。
末代まで呪ってやるからな…」

そ、それは怖い。けれど顔を上げたおじちゃんは、俺へと久しぶりに優しい笑みを見せてくれた。

それは子供の頃に見せてくれた笑顔と同じだ。

「菫…幸せにな…」

「はい…。お父さん!」

思わずおじちゃんの言葉に俺までうるっとなってしまった。

けれど隣に座る菫の瞳に涙はない。

全くどこまで強い女だ。でもそれでいいんだ。君が弱い所を見せるのは俺の前で充分。

昔からの癖はどうやら抜け切れそうにもない。

しっかりしていて、きちんとしている、そんな君も俺は好きだから。けれどたまには弱い所も見せてもらいたいもんだ。

「まぁー一件落着って事で!
ねぇ今日は折角だから皆でご飯でも食べようよ!あたしも文江さんも帰ってきている事だしさッ。
あたし、大地にも電話するしさ~~
もぉ~いつまでもそんな床に座ってないでさ。ねぇ、文江さん?」

さっきまでけらけら笑っていた舞が話をまとめだして、ばーちゃんに言った。

何でお前がまとめてんだとツッコミたくはなるが…。

「そうだよ、いつまでそこに座ってるつもりだい。
義彦せっかくあたしが日本に帰ってきたんだ!寿司でも注文してくれ!」