横から吉澤さんのヤジが飛ぶ。
…おまえ~…さっきまで俺と菫が別れたつー嘘っぱちの話を吹聴していたくせに!
しかしモデルか…。菫はヘルプで入ったモデルの仕事を、楽しいとは言っていた。けれどあれは一度きりの撮影という約束だった。
それに菫は篠崎リゾートの娘で、篠崎リゾートの1社員でもある。おじちゃんの心情は穏やかではないと思うし、自分の娘がモデルとして商品扱いされるのも快く思わないだろう。
菫本人がやりたいのであればそれを止める権利もないけれど…。
「難しいと思いますけどー…」
「でもイメージにぴったりなんだよな。写真を撮ってても全く持って違和感がない。
俺は引き続き専属として仕事して欲しいと思うけどね。奈々も菫ちゃんとは仕事したいみたいだしさ」
「そーだそーだ。俺も新しいモデル事務所で良い感じの子探してるんだけど、菫ちゃん以上にイメージに合う子って中々いないんだよなぁー!
それにネットでも話題になってるみたいじゃん。あの美少女は誰だ?!って。
そんな話題の美女が専属になったらS.A.Kの売り上げだって上がると思うぞ~?」
だから吉澤さんは余計な事を言うな。
俺は彼を無視して飯田さんにだけ目を向けた。
「一応聞いてみますよ。でもやっぱり仕事もしてますし難しいと思いますけど」
「頼むよ~ッ!潤!」
「だから吉澤さんはうっさい!!」
「何だよ~俺はS.A.Kの為を思って仕事をしてるのにー
潤がいじめるよー奈々ー」
吉澤さんは奈々さんに助けを求めたけれど、冷たい視線をぶつけられるだけだ。
「自業自得でしょ、よっしー…」