「そうだっけ?全然覚えていないわ…」

「菫は負けず嫌いだったからなー…。潤くんが何度も僕の負けだよって言ってるのにそれをきかなくって。
この時は沖縄に旅行に行った。その時綾さんとお父さん喧嘩しちゃってなぁ」

「そうなの?!」

「今にして思えば下らない喧嘩で内容も思い出せないんだが…。
綾さん昔からキツイ性格というか男勝りだったかなぁ」

「確かにおばちゃんは強かったもんね。
あぁ、確か大地が舞を海へ突き落したのよッ。
大地は昔から舞に意地悪ばかりしてたから。だからおばちゃんが怒ったんだっけ」

「懐かしいなぁーあぁこれは菫の発表会の時の写真だ。
初めての発表会で本番直前にお前は出ないって言いだして、昔から本番は強いのにその直前には弱いんだよなぁ」

「それは今も変わらないわ。確か潤が舞台袖で両手をぎゅっと握ってくれて、大丈夫だって言ってくれた」

「そうだな。潤くんはいつも菫を励ましてくれた…
ずっと一緒にいてくれたし、菫の事を1番よく分かってくれていた。
そんなの、分かっていた事なのになぁ……」

アルバムをめくる父の手が止まる。

そして私がモデルを務めたS.A.Kのカタログへと目をやった。 そしてこちらへ優しい眼差しを向ける。

胸がぎゅっと締め付けられる気持ちになる。だってその私を見つめる眼差しは、幼き頃の写真の中で私を見つめる父と同じ顔だったのだもの。

「菫は綺麗になったな…。それにこんな表情をするのだとか、こんな洋服が似合うなんて知らなかった。
自分の娘ながら、素敵な写真だと思った――………」