リビングにオレンジ色の間接照明が光っている。そっと覗くと床に座り腰を曲げた父が座っている。
思わず涙がこみ上げてきそうになった。
お父さんの背中ってあんなに小さかったっけ?いつも私達の前を歩く父の背中は広くて頼りがいがあって…でも明かりに照らされた父の背中はどこか頼りない。
髪には年相応に白髪が目立つようになってきた。
夢は自分の力で叶えるもの――
魔法に頼るだけじゃなくて、奇跡を信じて待ち望むだけじゃなくて、自分で行動をする事。
結果だけではなく、それまでの過程が大切なんだ。
ゆっくりと扉を開けた。
すると小さな物音に気付いた父がこちらを振り返った。
皺だらけの顔で父は静かな微笑みを落とす。
床には潤とモデルを務めたカタログと、何冊かのアルバムが無造作に置かれていた。
「あぁ、今アルバムを見ていた所だ」
そっと近づき、隣にしゃがみこむ。
どれもこれも私や大地の幼い頃の写真ばかりだった。そこには潤と、彼の妹の舞の姿もあった。
当たり前の事だが25年間もお隣さんをやっていれば、大抵の写真にはお互いが写り込んでいる。
父は優しい眼差しを向けて、写真を愛しそうに指でなぞる。
「菫も大地も可愛かったなぁ」
「お父さんとお母さんも若いね。全然白髪なんてない…」
「はは、そりゃーそうだ。誰にだって若い時はある。
これは昔山梨にブドウ狩りに行った時の写真だ。
この時菫が潤くんに食べた数を負けたくないっていって頑張って食べて、結局腹を壊したんだっけか」