美麗さんの話をする時の大輝さんはとても優し気だ。胸が締め付けられる程。

私はやはり美麗さんに似てはいない。そんなに強くない。 私…本当は強くない。強がってばかりいる事は本当の強さなんかじゃない。

「結構安心しています」

「え?」

「俺は少しだけ勘違いしてたみたいだ。
菫さんはいつだって気丈に振舞って強い女性だと思っていたけれど、いつだって強くいれる人なんていませんよね。
菫さんが弱くなれる場所があるのは、俺は良い事だと思っています」

私が弱くあれる場所。

強がって生きてきたように思える。

私は篠崎リゾートの娘で、お父さんの娘だからしっかりしなくてはいけないと。

自分に言い聞かせて生きてきた。だから何でも出来るように人一倍努力をしてきた。それはそれで間違いではなかった。

けれどどこかで疲れていて、フッと肩の力を抜きたい時もあって

そんな時はきっといつだってあの笑顔があった。 潤の笑窪が出来るあの優しい笑顔が、唯一私が弱くいられる場所だった。自分らしくいられる場所だったんだ。


「そういえば篠崎さんが冬に出す新店舗素敵なお店ですね。まだ構想しか見せてもらってないけど。
きっと篠崎さんは日本も美しいあの花も…そしてそのお店を贈りたかった人もとても愛しているのだと分かりました」

「え?」

「知らなかったんですか?美しい日本をそのまま閉じ込めたようなお店。
店名は確か……’SMILE’」