「潤くんはいい子ね」

「え?」

「昔から知ってたけどね、いい子だって事は。あの子は昔から大人にも気を遣うような優しい子だった。
病院にも来てくれたし、その前にも潤くんうちに挨拶に来ていたのよ?」

「潤が?!何しに?!」

そんな話は潤は一言もしていない。

「お父さんに話をしにきたわ。菫とはきちんとお付き合いをしているから、認めて欲しいって。
私の中で子供っていつまでも子供だと思っていたのだけど、そんな潤くんを見て大人になったんだなーって思ったわ。
きっと潤くんは菫とお父さんの事を何とかしたかったに違いないんでしょうけど。私達よりよっぽど大人で優しい子よ」

そんなの知らない。

潤がひとりで実家に来ていたなんて。

そこでも恐らく父が冷たい態度を取って、失礼な事を言ったに違いない。

そう考えると父へと沸々と怒りが沸いてくる。…父にだけじゃないか、潤にそんな事をさせてしまう自分にも、だ…。


私はどこまでも駄目な人間だ。

潤が何でも出来て、何でも願いを叶えてくれるからってそれに甘えっぱなしで…

自分では何も行動に移していない。今回実家に帰ってきたのだって自分の意志ではなかった。潤が帰った方がいいと言うから、帰って来た。

自分の意志で何ひとつ動いていないから、自分が今何をすべきかが分からないのだ。結果父と話せずにいる。

これじゃあ父に自分の道を決められていた頃と何ひとつ変わりないわ。結局は私は自分の意志で行動していないんだもの。