「えぇ。本人は大丈夫だって言っている。でもお父さんは昔からそういう人だから。
私がもっとしっかりしていたらお父さんの会社を手伝えるのにね。私ったら本当に駄目な人間よね。昔からお父さんに頼りっぱなしで…」
「そんな事…ないわ」
母は母で自分に出来る仕事をしている。だからこそ父は外で安心して仕事が出来るのであろう。
それにしてもお母さんとキッチンに立つのは久しぶりだ。小さい頃からよく母に料理は教えて貰った。料理が得意なのはそのお陰だ。そのお陰で潤も私のご飯は美味しいと言って喜んでくれた。
嬉しくてついつい毎日作って終いにはお弁当まで持たせた。今になって考えればお弁当何て迷惑だったんじゃないかしら。私ってば人の気持ちも考えずに行動してしまう所があるから。潤が何でも笑って許してくれるからって調子に乗って…。
「相変わらず菫は器用ね」
キャベツを千切りする姿を見て母がにこりと笑った。
「そんな事ないわ。それに料理は嫌いじゃないもの…」
「潤くんも喜んでくれたでしょう。
この間病院で会った時も言ってたわ。菫の料理は美味しいって」
「潤が…そんな事を?
そういえば今度週末にチーズケーキを作る約束をしていたわ…」
思い出しただけでため息が止まらない。
帰ってきたはいいが、直ぐに会いたくなってしまうのだもの。
どれだけこの3か月で潤が自分の中を占めていたのか分かる。
結局チーズケーキは作れずじまいか…。