「何だ、拗ねてるのか」

「はぁ?!」

「本当におじちゃんと菫はそっくりだよなぁ。その光景目に見えるわ。
お互いに素直じゃなくて意地っ張りでさ。
それでもふたりは親子なんだからいつか自然に話せるようになるさ」

「私は話をする事なんてないけどねッ!ただ早く潤との事を認めて貰って、またあの暮らしに戻りたいだけッ。
それなのに話をかけるなオーラ出しちゃって…」

「今度の週末に俺も実家へ帰るよ。その時一緒に話そう。きっとおじちゃんだって分かってくれるさ」

「うん………」

果たして理解は示してくれるだろうか。話を聞く耳も持っていないように見えるが。
というか話をする気さえ……。

電話を切った後もため息は止まらない。

私、本当にまた潤と一緒に暮らせるのかしら?あのカラフルな家で好きな事をして、好きな人と過ごす。あの場所が唯一私らしく居れる場所だったのに。

眠れない夜を過ごし、朝を迎えた。いつまでこんな事を繰り返せば気が済むのか。

「おはよう…」

「あら、菫。おはよう。早いのね」

「うん、今筋トレをして。
あ、朝ごはん作るの私も手伝うわ」

リビングを一通り見回しても、父の姿が見えないからホッとしていた。

その様子に気づいたのか、母は包丁を持っていた手を止める。

「あぁお父さんならもう会社に行きましたよ」

「え?!」

「何でも会社に行って早く終わらせなくちゃいけない仕事があるみたいで」

「だって…この間倒れて入院したばかりなのにッ…
あんまり無理をするのは良くないと思うわ。ねぇお父さん平気なのよね?」

母に詰めよったらくすりと笑った。