「いや、女とか連れ込んじゃいねぇし。そういう女なんかいないし」

「何あんた人の心勝手に読んでるのよッ!」

「いきなり無言になるからまたあらぬ妄想でもしてんじゃねぇかなーって。君は被害妄想が強いからね」

「はぁ~…何よ案外平気そうじゃない。私は潤に会いたくって仕方がないって言うのに」

「え?俺に会いたくって仕方がない?可愛い事言うようになったじゃんか~…」

「もぉ!!こっちは真剣に言ってるのにッ」

「うそ、うそ。俺も勿論菫に会いたいよ。でも案外元気そうで安心した。
すっげー落ち込んでたらどうしようかと思ったし」

「これでも落ち込んでいるわよッ。
家に帰ってきたはいいけどお母さんは私達に気を遣ってばっかりいるし…
お父さんなんて全く私と口を利こうともしないし…。大体あんなに帰って来いと騒いでいたのはお父さんなのに…
何よ…これじゃあ帰ってきたって何の意味もなかったじゃない…」

別に抱きしめられて喜ばれたかった訳じゃない。そんな子供じゃないわ。

けれどせっかく帰ってきたと言うのに嬉しそうな顔ひとつしないで、それどころか不機嫌そうにしてこちらへ目のひとつも合わせようともしないで。

そんな態度を見せられたらこちらから話を掛ける事さえ出来ないじゃない。話したい事も沢山あったけれど、無言で私を拒否するのだもの。