ソファーで雑誌を開く潤に寄りかかると、こちらへ微笑む。
何度見てもその仕草にはドキドキする。嬉しそうに笑う時に浮かび上がる頬の笑窪が、とても好きだと思うもの。
「何を読んでいるの?」
「これこればーちゃんが出てるんだ」
潤の手にあるのはどうやら海外のファッション誌のようだ。
その中には彼のおばあ様である文江さんの写真が掲載されている。
相変わらず派手な人だわ。未だに海外を飛び回っているバイタリティーのある人。
美しいメイクを施して、煌びやかなレースの赤いワンピースを着ている。幾ら歳を重ねても魅力の衰えない不思議な人だった。
「相変わらず文江さんは素敵ね」
「すっげー人だよなー。とーちゃんがこの人の血をひいているとは思えないけど」
「あら潤のお父さんはふんわりとしていて好きよ。
それにしても文江さんはすごい人だわ。今はパリで暮らしているんでしょう?」
「パリだっけか…。色々な所飛び回ってるよ。
あ、そーいえばばーちゃん帰って来るって言ってたな…」
「日本に帰国するの?」
「うん。かーちゃんが入院するってんで慌てて帰る手続きをしてるって聞いたけど、もうかーちゃん退院しちゃったからどうなるか分からんけど
あの人自身に連絡取るのさえ難しいんだから。」
「あらそうなの。久しぶりに会いたいものね。小さい頃に会ったきりだから顔も見てないんだもの。
でも写真で見る限り全然変わらないけどね」