9.潤□男としてのけじめ□
チュンチュンと雀の鳴く声が聴こえる。
昨夜までは月明かりが入ってきていたカーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
俺の胸の中で菫は安らかな寝息を立てていた。…生まれたまんまの姿で。
まさか菫の方から誘ってくるとは夢にも思わなかった。こんな生真面目な女が…そうとう勇気がいる事だろう。
隣で眠る菫の顔を見やる。するとまあ何とも幸せそうな顔。いつものきちんとしている姿ではなく、少しだけ頬がだらしなく緩んでいる。
そして何やらむにゃむにゃと口を動かす。 耳を近づけて聞いて見ると「潤……」と俺の名前を呼んでまた幸せそうに笑っている。
…可愛いな。寝顔はまるで小さい頃のまんまだ。一緒に寝ていたあの頃のまま――。
しかし身体はよく成長したもんだ。痩せ型だと思っていたけれど、胸は結構デカ…とか本人の前で言ったら殴られるんだろうなぁ~…。
それに何より菫の初めての相手が自分というのは誇らしい。初めてで…きっとこれが最後。菫にとって俺は初めてで最後の相手であってほしい。いやそうでなければならない。
「んー……」
俺の腕の中で菫がうめき声を上げたかと思ったら、ゆっくりと瞳を開ける。
そして直ぐにサッと顔を隠した。おいおい何を恥ずかしがっている。昨日は裸で抱き合った仲じゃないか。菫の身体の隅々は見たぞ?お前だってそうだろう?