菫は…先日まで婚約者らしき人物がいた。 日本の大企業ホテルチェーン西城グループの一人息子 西城大輝さんだ。

何の因果か、この間まで俺が気に入っていた女の子山岡美麗と現在付き合っている男。

話は途中まで進んでいたようだし、おじちゃんも西城さんがお気に入りで、この縁談の話がなくなった事で酷く落胆しているらしい。菫自身も相当西城さんが気に入ってたらしいが

小さな頃をした約束なんてとっくの前に忘れてしまって、いつか父親に決められたお見合い相手と結婚してしまうのだろうか。俺に何か言う権利はないが。

でも菫、お前は本当にそれで良いのか?



’うん。菫絶対に潤と結婚する’



俺はあの日の約束を忘れた事はない。

夢は大きくなるにつれて変わっていってしまう物だ。

今の俺の夢はデザイナーになって、自分のブランドを持つ事。

そしていつか俺がデザインして作ったウェディングドレスを菫へ贈りたいと思う。…相手が誰であれ。

お前の事を1番分かってる俺が、世界一お前好みのドレスを作れるのは間違いないだろう。 でも、今本当に幸せか?



俺がもしも魔法の絨毯を手にする男ならば、そのせまっ苦しい鳥かごから君を奪い去って
ふたりでどこまでも自由な世界を見せてあげられるのに。だってこの世界は広くて、まだ俺や君の知らない事が沢山ある。

けれど俺は生憎魔法の絨毯も持ってはいないし、羽根も生えちゃいない。窓越しに微笑む君はどこか近くて遠くて、幼馴染なんて切なくなるばかりだ。