「あいつムカつく」
人の悪口を余り言わない潤から出た意外な言葉。
「俺より背が高かった…」
「そこ?」
思わずつっこむと、潤はこちらを振り返り拗ねたように唇を尖らせる。
「それに顔もかっこよかったし。だからムカつく……。菫ああいうタイプ好きじゃん」
「まぁー…確かに顔はタイプだけど……」
正直に言ったら潤は大きな瞳でこちらを睨む。
口は災いの元というのを自覚すべきだったわ…。
確かに顔や体型はタイプだけど、あの人と私では気が合わないし…一緒にいて楽しく過ごせるはずがないのよ!
「でも私は潤が好きなのよ。何度も言うようだけど……だからあまり怒らないで…」
「怒ってねーよ」
そう言った瞬間、潤が私を抱きしめる。
そして頬を両手で引き寄せて顔を覗き込む。
さっきまでは明らかに怒っていた様子だったけれど、すっかりいつもの潤に戻っていた。
その笑窪の出来る笑顔が好きよ。…可愛らしい男よりかっこいい男の方が確かに好き。
でも潤に関しては見た目を超越した何かがある。それに可愛らしい顔をしていたって、あなたは男らしい私の王子様なのだから。
潤の顔を見つめていると、彼はゆっくりと私の唇にキスを落とした。そしてまた悪戯っぽい顔をして笑うのだ。
幼馴染という安心感とたまに見せる男っぽい顔のドキドキ感。彼に触れられるだけでこんなにも体が熱くなってしまうのは、やっぱり好きだからだと思う。
25年間一緒に過ごしてきた中での信頼感と、私へ見せた事のない自分を教えてくれる刺激も…やっぱり潤にしか叶えられない。