再び無理やり腕を掴まれる。今度は振り切れそうもないほど強い。なんつー強引な男!
確かに私は長身で少し冷たい感じの顔の整った男は好きだけど、強引すぎる男は好きではないのよ!
その手を思いっきり振りほどこうとした時だった。
「菫ッ!」
道路に横づけされた車は潤の外車。何とも目立つ真っ赤なアルファロメオは潤らしい車で、分かりやすい。
珍しく怒った顔をしていた。
いつもへらーっと笑ってばかりの男だというのに…。
コツコツと靴を鳴らしてこちらへ歩いてきて、大倉さんを睨みつけたかと思えば私と彼の手を振りほどいた。
私と潤を交互に見て大倉さんは「彼氏?」と問いかける。
負けじと潤が大倉さんの前に立ち「彼氏ですけど?!」と向き直る。
潤は特別小さい訳ではないが、大倉さんは180センチを超える長身な訳でちょっぴり見上げる形になる。
「へぇ意外。こんな可愛らしい彼氏さんなんだ。菫さんだからてっきりもっと大人な男かと思った」
それは少し小馬鹿にしたニュアンスが含まれているような気がするわ…。
確かに潤はかっこいいと言うより可愛らしい顔をしているけど、中身は王子様なのよ!と街中で叫んでやりたい気持ちでいっぱいに包まれた。
「うるせぇ。お前大倉って奴だろ。菫の会社まで来てストーカーかよ!」
「ストーカーなんて人聞きが悪いな。それに彼女のお父様から直々に紹介していただいた一応婚約者だったんだけど?」
「お前みたいな軽い男が菫と付き合う訳ねぇだろ!
菫は俺と付き合ってるんだ。金輪際菫の前に姿を現すなッ。今度姿を見せたらただじゃあおかねぇからな!」