1日の疲れがスッと吹き飛んでいくよな癒しメールである。潤のふわりとした雰囲気好きよ。頑なだった私の心まで溶かしていってくれるような。
パソコンの電源を切って、鞄を手に持ち軽やかな足取りで会社を出た時だった。
「菫さーん」
「ヒィッ!」
会社を出たと同時に黒く大きい影が私を包み込み、名前を呼んだ。
余りの驚きに肩がびくりと飛び上がってしまった。
明かりに照らされた目の前の大男を見て、再び驚き声を上げる。
「大倉さんッ」
「菫さん全然連絡返してくれないからさー」
「やだ…待ってたんですか?」
「今日はたまたま都内で会議があってね。菫さんの会社近くだったなぁーって寄ってみたところ」
てっきりストーカーかと思ったわ。
連絡もせずに待ち伏せをするなんて。
しかし連絡を返していなかったのは私だけど…。
「良かったらこれから食事に行かない?」
「いえ、困りますッ…。」
彼は父から紹介された私の婚約者…にさせようとした人。
顔はまあまあタイプだったんだけど、性格が全く私には合わない。それでも顔がタイプならいいかなと一時は思ったけれど…
潤とお付き合いを始めて、正式に断りをいれた筈だ。直接ではなく、電話だったけれど。
やっぱりそれは失礼だったか。電話1本で終わらせると言うのは…私だって大輝さんにお断りされる時電話1本で済ませられて、なんて薄情な人だと思ったもの。
自分が嫌だった事を相手にしてしまうなんて、失礼だったか…。