8.潤□君へのウェディングドレス□




おじちゃんの俺への評価は分かっているつもりだった。

しかしあれほどまでに菫が落ち込んで帰ってきた所を見ると、嫌な予感は当たっていたに違いない。

これはもうビシッとスーツを着て、テレビドラマのような「娘さんを下さい!」をやらなくてはいけないのか…。そんな事位で許されるほど甘くない話でもあるのだろうが。


菫はまだ俺の部屋のベッドで眠っている。…手は出せないまま。幼馴染ってそういう雰囲気を作り出すのが難しい。

悶々とした想いを抱えたまま自室で昨日届いたばかりのレースの生地を手に取る。

「綺麗だ……それに肌触りがとてもいい」

そしてスワロフスキーとパールも注文していた。

全部で1000個とか気が遠くなる話だが……。

菫が誰と結婚しようと、ウェディングドレスは俺が作ってやろうと心の中で決めていた。

ここ数日納得のいく物を造るために様々なお店に通っていた。これだけは妥協したくない。

このウェディングドレスを着て、俺と菫ハッピーエンドになるかは別として。どうして素敵な生地や装飾品を手にするとこんな素敵な気持ちになるのだろう。


男の俺がこんな気持ちになるのだから、それを受け取った菫はどんな顔をするのだろう。

嬉しくって泣き崩れてしまうだろうか。……いやそれはない。菫は滅多に泣かない女だから。驚いて腰を抜かしてしまうのではないだろうか。